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ウィル&レインボー+フィービー・スノウ  [2003.07.22]
 2002年に88レーベルが発足した際、第一弾としてリリースされたのが、ウィル&レインボーによる『オーヴァー・クリスタル・グリーン』だった。そこに結集していたのは、リーダーでありピアニスト、作・編曲家を兼任するウィル・ブールウェアほか、70年代から80年代にかけてフュージョン・シーンの全盛期を作り、今も第一線で活躍するミュージシャンたちだった。レーベルのプロデューサー、ミスター88こと、伊藤八十八氏にしか集められないメンバーの回合で、知った顔が多かっただけに、ミュージシャンたちの感じている懐かしさと喜びが手にとるように感じられて、それが嬉しかった。
 それに今にして思えば、あのタイミングしかあり得なかったのだ。というのも、前作はマイケル・ブレッカーボブ・バーグという2人のテナー・サックス奏者、加えてランディ・ブレッカーのトランペットという管楽器奏者を適材適所に配した音作りで評価を得たのだったが、02年12月、ボブ・バーグが自宅からマンハッタンに向かう途中、交通事故のため亡くなったのだ(合掌)。この悲しみについてふれると際限がないので今日は控えるけれど、期待していたウィル&レインボーのユニットも1作止まりかと、そのことも残念だった。

 だから、本作『ハーモニー』完成のニュースが入ったときは、ことさらに嬉しかった。
 このアルバム『ハーモニー』は予想通りの素晴らしいメンバーと、考えてもみなかったシンガーとで録音されていた。そう、フィービー・スノウが3曲でヴォーカルをとっていたのだ。
 しばらく耳にしていなかったフィービーの歌声が、強さをもって心をノックしてきた。キャロル・キングの<ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロウ>には、ノックどころか、ノックアウトされた。私の感動には、ある時代へのノスタルジーがあったけれど、決してそれだけではなかった。フィービー・スノウの歌声は、若い頃の繊細なビブラートに換えて、母性を感じさせる太さをもつようになっていた。
 そして凄腕のミュージシャンたちがいた。今回ウィル・ブールウェアが共演者に選んだのは、前作に引き続き参加を楽しみにしていたというマイケル・ブレッカー(ts)、スティーヴ・ガッド(ds)、ピーター・バーンスタイン(g)の3名に、新たに加わったエレクトリック・ベースの大職人アンソニー・ジャクソン、キーボード奏者としてだけでなくプロデューサーとしても人気の高いフィリップ・セスだった。そしてそこにフィービー・スノウが加わり、「虹」の七色がそろった。

 今作は各曲ごとに異なる色彩が、聞き物だった。ウィル、あるいはフィービーが愛する先人たちの楽曲が、ウィル渾身のアレンジでここに再生した。軽快なリズムをガッドが刻み、彼とリズム隊を組ませたら天下一品のアンソニー・ジャクソンのベースが、太いうねりを生んでいく。そこに配されるマイケルのテナーの男らしい語り口、ウィル自身の流麗なピアノ、ピーター・バーンスタインのギターの歌心。歌うときには歌い上げ、脇役にまわるときにはそれに徹する彼らの、いぶし銀のような技。それにさすが彼らだ、仲良しクラブにとどまることなく、そこには程良い緊張感があった。そのうえで音楽が、ひとつのハーモニーをつくって鳴っていた。
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