リチャード・ボナは、6歳のときから祖父と共に楽器を手作りし、近隣の町や村で歌い演奏してきた(ギャラは山羊)。13歳でカメルーンに初めて出来たジャズ・クラブに迎えられ、3ヶ月後には(それまで触ったこともなかった)ベース奏者として知られる存在になっていた。その超絶テクニックに惚れこみ、パリ時代の彼をスカウトし、95年にニューヨークに連れてきたのが
ジョー・ザビヌルだった。
以前ボナにニューヨークに住んでいて恐くないかと聞き、「ぼくは本物のジャングルから来たんだよ。コンクリート・ジャングルが恐いわけないだろう」とお腹をかかえて笑われたことがあったっけ。
彼が03年に発表した『ムニア〜ザ・テイル』は、今も私の愛聴盤だ。ミュージック・ダイアリーでも書いたけれど、温かでスピリチュアルな音楽性、超絶テクをひけらかさいシンプルな音作りが素晴らしく、夏バテに効く優しいパワーにあふれている。
アフリカ音楽のメロディアスな伝統を踏襲するボナの音楽は、同じ志をもつ2人のシンガーの共感を得、この夏1枚のアルバムになった。
ザイール出身のロクア・カンザと、フレンチ・カリビアンのジェラルド・トトの3人で、爽やかなハーモニーを生んだ『トト・ボナ・ロクア』だ。3人がパリに集まり即興的に作ったこのアルバムからは、心地よい風が吹いてくるようだ。
歌い、ギターを弾く3人の音楽の美しさ。ガーナに昇る明るい月を思わせるボナの曲、クロマティカルな声が大自然を呼び降ろすロクアの曲、3人の口パーカッションにのってトトが書き歌った曲は哲学的と、3人3様の個性が様々なブレンドで交じりあう。それが耳にも疲れた身体にも心地よく、いつまでも聴いていたい誘惑にかられる。
ボナが『トト・ボナ・ロクア』のレコーディングに参加した感想を、メールでくれた。
「最高に気持ちよかったよ。スタジオに入っていた4日間というもの、ぼくらは歌い、ギターを弾き、ひたすら音楽することを楽しんだ。その結果がこのアルバムなのだけれど、ぼくとしても大のお気に入り!」
ボナ曰く、アフリカにはまだまだ凄い人材が眠っているそうだ。
「その若い有能なミュージシャンを紹介していくことが、今後のぼくの大きな仕事になっていくだろう。聴いたら驚くミュージシャンが、ほんと大勢いるんだから。早く、聴かせたいなぁ」
ボナがそう言うのなら、こちらだって是非聴いてみたい。
彼らのおかげで、アフリカ音楽への想いは膨らむばかり。
あなたの夏の疲れが早く取れますように。秋風が吹いてきたらなるべくよく眠ることが、そのコツだと、我が鍼のドクターが言っていました。