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アフリカのミュージシャンに元気をもらって、夏バテをやっつけよう [2004.08.20]
 今年の夏の、暑かったこと!それに台風も多くて、大きくて、自然の驚異を改めて感じましたね。
 この残暑を何とか乗り切りましょう!ということで、今回は私お気に入りのアフリカ音楽から元気をもらおう、という提案です。アフリカといっても広うござんすが、私が注目しているのは、アンジェリーク・キジョーというベナン出身のシンガーと、このミュージック・ダイアリーでも常連、今音楽界で引っぱりだこのリチャード・ボナ(カメルーン出身のシンガー/ベーシスト/ギタリスト/パーカッショニスト)だ。

 この2人に共通するのは、パワフルな自己肯定の姿勢だ。女/男であることに始まり、自分を受け入れ、他の文化、出逢う人々と気持ちをシェアするのが得意。音楽面でも、自分のアイデンティティを大切にしながら、聴いて育った欧米(日本では渡辺貞夫)の音楽の影響にもとても肯定的だ。
 2人とも自らを「地球人」と言うが、それは彼らの感覚が言わせることばで、決して頭で考えたものではない。
 そしてメッセージ性の強さも共通している。表現者は、言いたいことがあるときほど力を発揮すると常々感じてきたが、この2人には切実に言いたいことがある。自由を叫ぶとき、それは監獄につながれた友人を想ってのことであり(キジョー)、クスクスのことを歌っても、それは他人のクスクスも食べようとする権力者に対する告発なのだ(ボナ)。
 まずアンジェリーク・キジョーの新作『OYAYA !』(母国語ヨルバ語で喜びの意)をご紹介しよう。
 9歳のとき奴隷制度があったことを知った彼女は、3日間泣き暮らし、長じてからは人権問題の弁護士になるかシンガーになるか迷い、後者を選んだ。1998年からアフリカの民族離散をテーマにした3部作を制作してきたが、新作はアフリカとカリブ海諸国の関係を描いた内容で、その完結編になる。
 キューバのチャチャチャやボレロ、プエルトリコのボンバといったリズムを使い、魂の喜びを求めようと歌い、子共を大切にしようと訴える。サウンドはひたすら明るく、躍動に充ちて、聴いたら踊らずにはいられない。キジョーが言った。
 「私はアフリカ大陸の良い面を歌うことで、そこが内紛と飢餓だけの大陸ではないことを、多くの人に知ってもらいたい。と同時に問題を歌い、改善を願うの。私の音楽を聴いてくれた人が、自分自身を誇りに思ってくれたら嬉しい。自分を誇りに思えなかったら、他人や異文化を受け入れることは出来ないから。音楽を通して感じる喜びは、国や肌の違いがあっても、同じだと思う。その喜びが、私たちがひとつの『地球人』だという証左になると思うの」
※権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。
▲7月にブルーノート東京に来日したときの、キジョーのステージのパワフルなことといったらなかった。その折りに、2人で。
▲2003年秋に来日中のボナとNHK-FM「ジャズクラブ」収録時に。
 リチャード・ボナは、6歳のときから祖父と共に楽器を手作りし、近隣の町や村で歌い演奏してきた(ギャラは山羊)。13歳でカメルーンに初めて出来たジャズ・クラブに迎えられ、3ヶ月後には(それまで触ったこともなかった)ベース奏者として知られる存在になっていた。その超絶テクニックに惚れこみ、パリ時代の彼をスカウトし、95年にニューヨークに連れてきたのがジョー・ザビヌルだった。
 以前ボナにニューヨークに住んでいて恐くないかと聞き、「ぼくは本物のジャングルから来たんだよ。コンクリート・ジャングルが恐いわけないだろう」とお腹をかかえて笑われたことがあったっけ。
 彼が03年に発表した『ムニア〜ザ・テイル』は、今も私の愛聴盤だ。ミュージック・ダイアリーでも書いたけれど、温かでスピリチュアルな音楽性、超絶テクをひけらかさいシンプルな音作りが素晴らしく、夏バテに効く優しいパワーにあふれている。

 アフリカ音楽のメロディアスな伝統を踏襲するボナの音楽は、同じ志をもつ2人のシンガーの共感を得、この夏1枚のアルバムになった。
 ザイール出身のロクア・カンザと、フレンチ・カリビアンのジェラルド・トトの3人で、爽やかなハーモニーを生んだ『トト・ボナ・ロクア』だ。3人がパリに集まり即興的に作ったこのアルバムからは、心地よい風が吹いてくるようだ。
 歌い、ギターを弾く3人の音楽の美しさ。ガーナに昇る明るい月を思わせるボナの曲、クロマティカルな声が大自然を呼び降ろすロクアの曲、3人の口パーカッションにのってトトが書き歌った曲は哲学的と、3人3様の個性が様々なブレンドで交じりあう。それが耳にも疲れた身体にも心地よく、いつまでも聴いていたい誘惑にかられる。
 ボナが『トト・ボナ・ロクア』のレコーディングに参加した感想を、メールでくれた。
 「最高に気持ちよかったよ。スタジオに入っていた4日間というもの、ぼくらは歌い、ギターを弾き、ひたすら音楽することを楽しんだ。その結果がこのアルバムなのだけれど、ぼくとしても大のお気に入り!」
 ボナ曰く、アフリカにはまだまだ凄い人材が眠っているそうだ。
 「その若い有能なミュージシャンを紹介していくことが、今後のぼくの大きな仕事になっていくだろう。聴いたら驚くミュージシャンが、ほんと大勢いるんだから。早く、聴かせたいなぁ」
 ボナがそう言うのなら、こちらだって是非聴いてみたい。

 彼らのおかげで、アフリカ音楽への想いは膨らむばかり。
 あなたの夏の疲れが早く取れますように。秋風が吹いてきたらなるべくよく眠ることが、そのコツだと、我が鍼のドクターが言っていました。
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