ここ数年、
渡辺貞夫さんの活動が活発で、しかも素晴らしいんです。所属レコード会社から離れられたので、その活動があまり巷に流布していないのが残念ですが。
そこで、今日はそんな貞夫さんの数々の活動の中でも、特に感動した「万博」でのコンサートの模様と、暮れに行われる「クリスマス・コンサート」のことを書こうと思います。
まず、万博から。
8月18日、「愛・地球博」EXPOドームで行われた「渡辺貞夫/地球サウンド」は、まさしく渡辺貞夫にしかできない、音楽であり、コンサートでした。貞夫さんと、五大陸から結集した総勢400人の子供たち(打楽器隊とコーラス)が共演したのですから!
貞夫さんが、愛知万博・政府出展事業「日本館」の総合監督をつとめたことはご存知でしょうか。「日本館」のためにこの3年、貞夫さんは身を粉にして尽力してこられました。
そのメッセージソング「ウィ・シェア・ザ・ワールド」が、EARTHということばを音に移しかえた5音階だけで作曲されました。それを400人の子供たちとの共演で聴けるのですから、私も(夫にドライヴァーをしてもらって)愛知万博に駆けつけました。暑さも、万博の混雑も、楽しみのためとあらば苦になりません。
さぁ、開演です。わ、出てきます、出てきます。各国のパーカッション集団が!
ブラジルのオロドゥン・ジュニオールが、腰に下げた太鼓からサンバレゲエのリズムを叩きだすと、立体的な躍動がわき起こり、会場がカーニバル色にそまりました。貞夫さんが10年間、手とり足とり指導してきた栃木リズムスクールも、祝祭の立派な一員です。ここまでで、既に涙が出てくるような感動があります。それはこのイベントが貞夫さんの夢がかなったもので、一朝一夕でなったものではないと知っているからでしょうか。パーカッション軍団が繰りだすリズムが地球を揺るがすように、身体に振動を伝えてくるからでしょうか。
ポルトガルの政府が支援して作っている青少年パーカッション・グループ、トカファは、リーダーのかけ声ひとつで16名がいっせいに動きを変えます。ばちをもった手で伸びやかな弧を描きながら、ステップで編隊を変えていくのです。赤いTシャツに白いパンツという制服も目に鮮やか。その編隊の動きも見事ですが、静止する姿が見事に決まっていて、絵になっているんですね。
和太鼓を代表した鹿児島の霧島九面太鼓、郷花(はるか)は全員女性。かわいらしさと勇壮さで、日本のリズムの華やぎを伝えてきました。
アフリカ代表、セネガルから出場したドゥグは、細い木のばちでたたく独特の太鼓の音色と、幼いダンサーの激しい動きで観客を魅了しました。
アメリカでもゴスペルの実力で知られるハレルヤ・カンパニー・ジュニアは、2人のシンガーの高音域を活かしたソロを中心に、天にも届く声の重なりを聞かせました。彼らはバンドも自前で、アメリカのエンターテインメントの層の厚さをまたここで目の当たりにしたわけです。
と、各グループの演奏も素晴らしかったのですが、やはり圧巻は全員がそろって歌い演奏するときでした。なかでも、先ほどふれた渡辺貞夫さんが万博のために作曲した「ウィ・シェア・ザ・ワールド」では、歌詞どおりの「笑顔のハーモニー」がありました。400人の子供一人ひとりの大きな笑顔のなかに、音楽がもたらすポジティブな力が輝いていたのです。
ステージ中央で400人をまとめ指揮する貞夫さんのサックスが、まるで太陽のように子供たちと観客を照らしていました。聞けば、アフリカで70年代に独立を祝う式典で、大群衆の打楽器に囲まれた、その時の感動をもう一度違った形で再現したかったのだそうです。そのリ・クリエイションが、名古屋で美しく成し遂げられたことを感じました。
観客もみんな地球の子供になって、手拍子、足拍子を繰りだし、音楽の一部になったのでした。
終演後、感動のあまり(+貞夫さんと別れたくなくて)泣きじゃくって貞夫さんにしがみつく子供たちの姿に、あぁ、「真の教育」とはこういうことなのだなぁと、感銘を受けもしました。心のうちにともされた灯は、今後決して消えることがないと思います。
もうひとつ、終演後楽屋を訪ねたときの、ぜひお伝えしたいこぼれ話を聞いて下さい。
貞夫さんは晴れやかな笑顔で、私たちにもお茶やお菓子をふるまってくださいました。(名古屋名物「天むす」も勧めてくださいましたっけ。)で、こう言ったのです。
「このなかから、ぼくのグループに入る子供が1人くらい、でるだろうね!」
このポジティヴさ!素晴らしく前向きでしょう?この精神が、渡辺貞夫の音楽の根幹をなすものなのです。
私も、暑いとか、疲れるとか、言っていられないなと思いました。この意味でも、貞夫さんは、私たちのかけがえのないお手本なのです。