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クリスマス・イルミネーションが街に灯る今頃になると、慌ただしいですね。年末締め切りモードに、日本中が突入するからでしょう。ここで、ゆったり構えられれば大物ですが、私は器が小さく、率先してあたふたするタイプです。
ですから大掃除は11月中にすませ(小掃除を繰り返す)、クリスマス飾りも早々に。なぜって、暮れは原稿の締め切りが立て込んで、1日4〜5時間しか眠れない日々が続くからです。今日も完徹。「オール」と言うと、気分でないの、ごめんなさいぃ。
ま、おかげさまで好きな仕事ですからね。そう疲れるわけではありません。書ければスッキリという、ある種因果な、でも大変幸せな体質になっています、ハイ。

さて、今日はお正月休みにゆっくり音楽を聴こうという方たちのために、お勧めのアルバムを、なるべくジャズじゃないところから取り出し、書いてみようと思います。無理矢理タイトルをつければ、「60歳代になっても素敵なシンガー/グループの新作特集」です。
まず、今年リリースされ、最も好きだったポピュラー・アルバム、 キャロル・キングの『ベスト・ヒッツ・ライヴ〜リヴィング・ルーム・ツアー』から始めましょう。
「ようこそ、私のリヴィング・ルームへ。聴きたい曲を全部演奏できなかったら、ごめんなさいね。だって私も62歳よ」と歌う新曲でスタートする、このアルバム。2004年に行われた「リヴィング・ルーム・ツアー」の模様をおさめた、ライヴ2枚組です。
早熟の作曲家だった60年代に書いた大ヒット〈ロコモーション〉から、名曲〈君の友だち〉(原曲名You've Got A Friendの方が通りがいいですよね)まで、キャロルが作詞・作曲したヒットが、ずらずらっと並んでいます。名曲は朽ちません。今聴いてもフレッシュな香りを放つ楽曲群に、心、わしづかみです。
思い返せば、キャロルはシンガー・ソング・ライターの先駆けでもありました。ジョニ・ミッチェル、リッキー・リー・ジョーンズといった同世代の女性シンガー・ソング・ライターたちと共に一時代を作ったのですが、作曲家として認められたのは、キャロルが最も早かったのです。
その彼女の弾き語り(ヴォーカル&ピアノ)を軸に、アルバムはシンプルなアコースティック編成で進みます。キャロルの娘、ルイーズ・ゴーフィンが飛び入りし、デュエットした〈ホェア・ユー・リード・アイ・ファロー〉も、自宅の居間という雰囲気作りに一役買います。娘の高音に、母親キャロルのパンチがきいた低音。キャロルの歌声の方がエネルギー・レベルも高く、若さもあって。その不思議に、感動です。

エリック・クラプトンも60歳。英米の団塊の世代も、日本同様元気ですねぇ。(私は彼らがリタイアするとき、熟年離婚ではなく、きっと文化的な革命を起こすと期待しているのです!)
あ、そう、クラプトンです。2005年の新作『バック・ホーム』は、「私的な歌詞も多いので、娘たちを傷つけたくないから万全を期した」と、制作に2年をかけたもの。敬愛するブルース・マン、ロバート・ジョンソンに捧げた前2作は「気分転換的な作品でした」とは、ちと聞き捨てならないけれど。
「子供たちにお休みのキスをするとき、大わらわだった一日が報われる」と、父親の日常を歌った〈ソー・タイアード〉で始まり、夫人への愛を歌った〈ワン・トラック・マインド〉。フェンダー・ローズとコーラスでゴスペルチックに盛り上がる〈ラン・ホーム・トゥ・ミー〉も、歌詞を聞くと、娘さんへの溺愛ソングだ。
いいんです。子供さんがかわいいのは、親として当たり前。そうでなかったら、おかしいんですから。でもねぇ、聞いているうちにクラプトンが、好々爺にみえてきた。〈ラン・ホーム・トゥ・ミー〉なんて、娘の結婚式で弾いちゃいそうだもの。
「歌」は、むずかしい。悲劇は歌になりやすいけれど、「幸せ」を名曲にするのは容易ではないのです。

その点、 ローリング・ストーンズは、いくつになっても「不良」の匂いがしていいわ。至難だと思いません?60歳すぎて、不良チックでいられるのって。
クリーム、クィーンの再結成が話題になった今年ですが、ストーンズは結成以来、40年以上走り続けてきたのですすごい!と思う。
今回の8年ぶりの新作『ア・ビガー・バン』には、仲良くタッグを組むミック・ジャガーとキース・リチャーズがいました。実際に、レコーディングの大半がミックの自宅で行われ、キースがトラック1台分のワインをもちこみ、2人で曲作りに没頭したのだそうです。2人の間に80年代にあった、音楽的な亀裂は、もうすっかり解消したようです。
だから、キースが〈虚しい気持ち〉や〈インフェミー〉で渋いノドを聞かせるときも、ミックがバックでハーモニカを吹き、コーラスを担当するばかりか、キーボードやスライド・ギターまで弾いています。
この2人が両輪となってローリングするとき、ストーンズは全速力で回転するのです。
ブッシュ政権を真っ向から批判した〈スウィート・ネオ・コン〉には、ストレートで政治的に危ない歌詞が満載。
〈ラフ・デンジャラス〉では、「もう一度オレとつきあおう」と言い、〈Oh,No,ノット・ユー・アゲイン〉では「完璧な女だけど、もうお前には振り回されたくない」と歌うミックも、絶好調。「女とのアレコレ」という彼生涯のテーマが健在で、うれしかったし、安心しました。
ドラムスのチャーリー・ワッツも咽喉ガンを克服し、ワールド・ツアーも終了?あら?日本には来なかった。
ともあれ、私たちは、人類史上、初めてcoolな60歳代を目撃しているのだと思います。

おまけ、ではありません。でも ダイアナ・クラールだけ、マイナス20歳くらい若いので、今日のテーマには入らないのですが、新作クリスマス・アルバムのできがいいので、書いておきたいのです。
タイトルは『クリスマス・ソングス』。ビッグバンドやウィズ・ストリングスで、有名クリスマス曲を歌う、王道をいく作りです。
ブリティッシュ・ロック界の鬼才、エルヴィス・コステロと結婚し、ガラッと芸風が変わった話は以前書きましたよね。このクリスマス・アルバムは、一見昔のグッド・ガール路線に戻ったかのような編成と選曲ですが、聴くと,そうではないんですね。
一言でいうと、歌の感触が、「姉御肌」になったんです。ストッパーが(夫の存在により)うまくはずれたのでしょう。ここには、歌いっぷりにガッツがみなぎり、スウィングするダイアナがいました。
鈴の音とギターでスタートする〈ジングル・ベル〉では、ダイアナはスキャットを多用し、ホーン・セクションを従えて、勢いよく歌い飛ばします。ピアノも、腕を上げています。というわけで、私の今年の一押しクリスマス・アルバムになった次第です。
温かな気持ちのクリスマスをすごされますよう、こちらからもお祈りしています。
あなたと、あなたのご家族と、世界のLove & Peaceを祈っています(これはいくら不可能に思えても、ぜったいにあきらめられません)。
Happy Holidays!
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