中川ヨウのミュージック・ダイアリー

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ミシェル・ルグラン「努力のすすめ」

[2007.04.27]
 グラミー賞5回、アカデミー賞3回の受賞歴を誇るフランスを代表する映画音楽作曲家、指揮者、ピアニストのミシェル・ルグランに会いました。セーター姿のマエストロに、まず彼の55年間にわたる活動の源泉を聞きました。
 ミシェル・ルグランは、手がけた映画音楽が約80作、アルバム120枚という、多作な作曲家ですからね。豊かな創作活動を半世紀以上続けてこられたなんて、奇跡のように思えたからです。
「わたしは、多作な作曲家だと言われているでしょう。わたしの活動を支えてくれたのは、他でもない。"締め切り"の存在なんだ。プロだから、仕方なく期日を守って仕上げようと努力する。すると締め切り直前に、天から何かが降りてくるんだ。その意味で、締め切りは、わたしの親友なんだ。締め切りを嫌っちゃ、いけないね。締め切りがなければ、どんな芸術家も作品を仕上げないはずだから。テクニックも必要だが、天から降りてくるものがなければ創造はできない。
 それに努力!今の若者は努力をしないね。勉強しないで、何が生めるんだ。わたしが11歳からコンセルバヴァトワール(国立高等音楽院)で、どれほど勉強してきたか。今の若者は努力もしないで、金をもうけようとする。あり得ない!」

 今年75年を祝うミシェル・ルグランが、次第に頬を紅潮させて、そう語りました。ルグランが、締め切りと努力を「親友」として活動してきたとは、なんと励まされる話でしょうか。
 そうか、締め切りを嫌ってはいけないなと、心に誓いながら、彼が書いたさまざまな美しい旋律を、思い出していました。
 カトリーヌ・ドヌーヴが主演したミュージカル映画「シェルブールの雨傘」(64年公開)、「華麗なる賭け」(68年)、「思い出の夏」(70年)、「三銃士」(73年)。枚挙にいとまがありません。
 ルグランが、その活動の中で、幾人かの天才に出会ったと、膝をのりだしました。
「パブロ・ピカソに会ったとき、レオナルド・ダヴィンチそっくりに描いてみてとけしかけたら、まるで本物のような絵を描いてくれた。わたしも、もしモーツァルトのように作曲してと言われれば、そうできる。アートとはそうしたものなんだ。その能力があってこそ、独自のものを創作できるのではないか。
 1958年にマイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンスたちとレコーディングした『ルグラン・ジャズ』は生涯の思い出だ。即興演奏とは、瞬間の作曲なんだ。マイルスが即興にどれほど秀でていたか。わたしが千の選択肢を思いつく。するとマイルスは、1001個目の選択肢を選んで演奏するんだから、いつも驚かされてばかりいたよ。彼はわたしの天使だった」

 ルグランは制限(不自由)のなかでこそ自由が生まれるといい、音楽も例外ではないといいました。テンポ、ハーモニー、スタイル。その制約の中で美を生みだす。それが愉しいのだというのです。
 近年も創作意欲がふつふつとわきあがり、初の本格的な舞台劇「壁抜け男」で新境地を見せ、今年の秋には新作ミュージカル「モンテクリスト伯」をロンドンで上演する予定だそうです。
 そして10月29日(愛知県芸術劇場コンサートホール)から11月2日(東京国際フォーラムホールA)まで、シンフォニー・オーケストラを引き連れて、6年ぶりの来日公演を行います。
「ジャズまでこなせるオーケストラは自慢できる。わたしのオーケストラは柔軟性がないとつとまらないからね」と、胸を張るマエストロ。
 そこに実姉で、元スウィングル・シンガーズのリード・ソプラノをつとめたクリスチャンヌ・ルグランも参加するそうです。

  珠玉の名曲の数々を、作曲家本人のタクトで聴けるなんて、そんな贅沢なことがあるでしょうか。秋の公演が今から楽しみなわたしです。
4月7日のジュリエット・グレコのオーチャードホール公演に行きましたが、今までの公演のなかでも最高のすばらしさでした。

アコーディオンと、グレコ さんの夫で作曲家/編曲家であるジュラール・ジュアネストのピアノだけをバックに歌いつぐという構成。わたしの好きな「小さな魚と小さな鳥」では、魚と鳥の恋を、彼女ならではの美しい手の動きと詩心で歌いました。哀切な「行かないで」。もう最後の2曲では、わたしは涙を抑え切れませんでした。
彼女の人生に、心から感謝した公演でした。
 その前夜、フランス大使公邸で、大使夫妻のおはからいで、グレコさんを囲む温かく親密な会が開かれました。広尾にあるフランス大使館には、まだ名残の 桜も咲いていて、その広い庭に面した1階をすべて解放してのパーティ。
 現大使が舌の肥えた方で、今まで同大使館でいただいたお料理のなかでも、格別な美味しさ。このカクテル・グラスには、ムースのなかにウニが入っているんです。お肉もチーズもシャンペンもすべて美味しかった。グレコさんの横で、招聘された中村敬子さんが、とびきりの大きな笑顔でいらしたのも印象的でした。そして何よりグレコさんの美しさと、どんな場所にあっても誠実な人柄に更に魅了されました。
権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。

写真提供:
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル

ミシェル・ルグラン&
グランド・オーケストラ生誕75周年
ジャパン・ツアー2007

10月29日(月):愛知県
愛知県芸術劇場コンサートホール
[お問い合わせ]
サンデーフォークプロモーション:
052-320-9100

10月30日(火):大阪府
フェスティバルホール
[お問い合わせ]
フェスティバルホール:06-6231-2221

10月31日(水):東京都
Bunkamuraオーチャードホール
[お問い合わせ]
ザックコーポレーション:03-5474-9999

11月1日(水):東京都
Bunkamuraオーチャードホール
[お問い合わせ]
ザックコーポレーション:03-5474-9999

11月2日(木):東京都
東京国際フォーラムホールA
[お問い合わせ]
ザックコーポレーション:03-5474-9999

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