音楽は、自由の代名詞のようにいわれますが、実は20世紀までは、音楽のうちにはさまざまな境界線がありました。芸術音楽/大衆音楽、ジャンル、国や世代といったボーダー、ジェンダー(性差)も大きな壁でした。
わたしがドラムスの練習台を借りて、ドコドコやっていた時代、友人たち、それもミュージシャンの友人たちが口を揃えていいました。
「女の子がそんなカッコで、何してる。行儀が悪いよ」
ま、それだけでドラムスを諦めたわけではないんですが、女性にふさわしいとされる楽器の「しばり」が、けっこうあったのです。ピアノ、フルート、OK。弦楽器も小型が望ましく、ハープは大歓迎。そのかわり、管楽器はアウトでした。
80年代後半に、そういった境界線が消えはじめ、音楽がボーダレスな方向に向かいはじめました。奇しくも、共産主義が崩壊し、ベルリンの壁が壊された、その時期と呼応します。(音楽の発展は、当然ですが社会の動きと連動しています。)
ジェンダーも、その消えたボーダーのひとつでした。現在はテリ・リン・キャリントンを筆頭に、女性ドラマーが活躍し、管楽器にも女性が多数進出しています。アルト・サックスを手にスターになった、キャンディ・ダルファーの功績も大きかったですね。次世代女性に「カッコイイ、わたしもやりたい」と思わせる、インフルエンスをもっていましたから。
世の中は大型連休。そして若葉が美しい5月!ということで、ますます元気を出そうと、今日は日本ジャズ界の未来を担う女子をご紹介します。

まず小林香織から。小林香織は、81年生まれのアルト・サックス奏者です。第3作『Glow』をリリースしたばかりですが、その新作で初めて彼女の「声」が聴こえたという、うれしい印象をもちました。
それは、収録曲のほとんどが自作曲だということと、演奏の腕が上がったせいだと思ます。ポップ・フュージョンの楽しげなリズムにのって、「等身大の自分を表現しました」。低音域がガッツを感じさせるプレイで、今年3月には韓国でのホール・コンサートを成功させたそうです。
彼女は可愛いので、そのキュートなルックスと音とのギャップを指摘させることもあるようなんですね。以前はきっとそのことにも悩んだはずですが、「今はそれもいかしていこうと、余裕がもてるようになりました」。
がんばって!そう声をかけたくなる、小林香織ちゃんです。キャンディ・ダルファーのように、しなやかに過激に前進していくことでしょう。今年は4beat じゃないLIVEもどんどんやるとのことですから、一度生で見て、そのサウンドで踊ってくることをお勧めします。

86年生まれの矢野沙織も、やはりアルト・サックス。沙織はバリバリのビ・バップを吹きます。うまいですよ。聴くからに、がんばり屋さん。
「ビ・バップ命?」と聞いたら、「命じゃない。今一番カッコイイと思っているだけ」。
新作『グルーヴィン・ハイ』はジェームス・ムーディーらを迎え、今までより大きな編成でアンサンブルを中心に聴かせます。スライド・ハンプトンが譜面を書いていますが、これが素晴らしいので、今までと一線を画する作品になりました。
ピアノの今泉明さんの演奏も、素晴らしかった。これだけすごいホーン奏者を向こうにまわして、臆することなく、戦うこともなく、自身の歌心を発揮しているんですからね。こういう演奏を聴くと、ジェンダーは無関係。いいものはいいということが、明確に解ります。
矢野沙織ちゃんに聞くと、最近、自分に足りないところを思い知り(全部とご本人)、今猛烈に勉強したいのだそうです。4月からジェームス・ムーディー宅に泊まり込みで師事することが決まっているそうです。よかったですね。ムーディご夫妻は、大変温かい方ですから。
でも、そんな短期間ではなく、本当は大学に入って勉強したいんじゃないかな?沙織ちゃん。その前に、売れちゃいましたからね。売れるのも大変ですが、売れてからの方が、実は大変なんです。
それに彼女の場合、アルバムのリリースの間隔が、少々狭すぎるかもしれませんね。彼女自身が望んでやっているんならいいのです。でもアウトプットしたら、インプットしないと、表現者は枯渇します。どうか消費されないように、自分を大切にしてください。
せっかくの大きな可能性をもった、アルト奏者なんですから。
わたしならジュリアード音楽院が始めたジャズ・マスターコースを勧めますね。まだ日本人で入学した人は、いないんじゃないでしょうか。
アメリカのミュージシャン、シンガーが、長い間右肩上がりに腕をあげるのには訳があって、それはプロになってからも、学ぶ場がある、学ぶ機会を作るからなんですね。プロこそ、学ぶ必要があるわけです。
時間はたっぷりあります。日本女子の皆さん!ガールズ・ビー・アンビシャス!でいきましょう。

他にもご紹介したい女子に、トランペッターの市原ひかりがいます。彼女の新作「スターダスト」が5月にリリースされますので、これはもう少ししてから、詳しく書きます。どうぞお楽しみに。
小林香織と、市原ひかりは洗足学園音楽大学ジャズコースの卒業生です。わたしは同大学で教えていますが、それは彼女たちが卒業してからのことでした。でもですね、頼むと今でも学生のために大学に駆けつけてくれるんですね。いい先輩でもあるわけです。
洗足学園音楽大学にいると、女子ホーン奏者が今後もどんどん輩出されると断言できます。女子は、いい意味で「お得」なんですよ。音楽に限らず、天職に就きやすいんです。その仕事で家族を養わなくてはいけないという、プレッシャーがかかりませんから。だから、本当に好きなことを仕事にしやすい。わたしのように、ですね。
歌も聴きたいですよね。akikoの新作『Vida』を、お勧めしましょう。
今まで登場した女子に比べたらキャリアがありますが、ここ数年ジャズ・ヴォーカリストのデビューがと〜っても多い割に、なかなか実力が伴わないのが現状。でもakikoは、やっぱりいい。新作を聴いて、そう思いました。
「歌」にやさしさとゆとりが生まれてきたのです。だからこの新作のようにブラジルものは、ぴったりですね。
「ブラジルのミュージシャンって、セレクティヴな耳をもっているんでしょうね」というブラジル録音が功を奏して、明るく、でも適度にゆるいテンションで、南風をよぶんです。ボサノヴァもサンバも、しっとり系も好テイク。
『Vida』を車に積んで、あぁ、海に行きたいわ。大型連休中は道が混むから、その次の週末狙いでしょうか。
左から、第一興商社長、和田康孝さん、作詞家/音楽評論家の湯川れい子さんと、充実ランチ@ウエスティン。お互いの子供時代の話から、世界平和まで、話が弾みました。
湯川れい子さんから、ご伝言。「6月15日から21日まで、ハワイのカウアイ島スピリチュアル・ツアーを計画しています。マジメにスピリチュアルな世界に興味がある方は、ご一緒しましょう。フラの聖地にも行きます。カウアイ島は、太古ムー大陸があった場所だとわたしは信じているんですよ」
問い合わせ先:オフィス・レインボウ 担当:中山さん
電話03-3702-3380 FAX 03-3702-5400
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小林香織
「Glow<初回限定盤>」
ビクターエンタテインメント
VIZJ-7
2007年3月16日発売
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矢野沙織
「Groovin' High」
コロムビアミュージックエンタテインメント
COJY-9221
2007年1月24日発売
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市原ひかり
「Stardust」
ポニーキャニオン
PCCY.60006
2007年5月16日発売
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akiko
「vida」
ユニバーサル ミュージック
UCCJ-9080
2007年4月25日発売
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