ジョニ・ミッチェル、5年ぶりの新作『シャイン』が届きました。うれしい驚きをもって受けとったのは、2002年、ジョニが前作に当たる『トラベローグ』を発表したときに、レコーディング・アーティストとして引退宣言をしていたからでした。
1934年カナダ、アルバータ州に生まれ、少女の頃、音楽と絵画とバレエが好きだったジョニは、70年代にシンガー・ソングライターの草分けとして活躍して以来、世界中の若者の共感を得てきました。繊細なメロディと、詩としても鑑賞できる歌詞で、多くの悩める若者の心をつかんだのです。もろろんジョニの「引退」を惜しむ声が高まったのですが、真の意味でインディペンデントな活動を貫いてきた人です。誰も彼女に指図はできませんでした。
それが、今年になって、彼女の背中を押す動きがではじめました。まず、彼女へのオマージュを捧げようと、ミュージシャンが結集してジョニ・ミッチェル作品集を作ったのです。そして、もうひとつ、彼女を突き動かしたものがありました。
ジョニ・ミッチェルは少女の頃から、音楽と絵画とバレエが好きだったと、先ほど書きましたが、音楽家としてはもちろんのこと、画家としての活動も続行し、近年は油絵を中心にしたジョニの作品(具象)に高い評価も集まっています。ですが、残りのバレエに関しては、そうはいきませんでした。小児麻痺の後遺症により、バレエだけはあきらめなければならなかったのです。
そこからが、ジョニを見習いたいところです。ジョニのバレエに対する情熱は消えることなく、ここにきてバレエ「ザ・フィドル・アンド・ザ・ドラム」の芸術監督をつとめ、永年の夢を果たしたのです。そのバレエのために書き下ろした2曲が新作『シャイン』に収められていますが、その曲を録音したかったことが、復帰の大きな要因になったと思うのです。
ジョニ・ミッチェルのカムバック作『シャイン』には、手作リ感がありました。歌ばかりじゃなく、プロデュースもし、楽器もピアノ、ギター他、ジョニ自身が多くの楽器を担当しているからです。1曲の歌詞をのぞいて、すべて彼女の作詞・作曲・編曲による10曲は、彼女が一人で作り上げた後、仲の良いミュージシャンに声をかけ、音を重ねたのでしょう。特にグレッグ・リーズのスティール・ペダルが効いています。予想以上に明るい曲想が多く、ことばを飾らずに、メロディも奇をてらうことなく、素直な心情が聴き手に差し出されていました。
〈ディス・プレイス〉では地球の現状を憂い、〈ストロング・アンド・ロング〉では、戦争が好きな「男たち」を批判しました。〈バッド・ドリーム〉では、「脳が休まることがないこのエレクトリック社会では、誰もが被害者。(人生という)壮大なプランの前では、悪い夢を見たとしても、それは悪いことじゃない」と歌いました。
真っ当な批判と、ポジティヴネス。その両輪があるから、「シャイン=輝き」がありました。長い充電期間が功を奏したのか、元来のハスキーな歌声が、今作では瑞々しくパワフルに響いています。彼女が煙草をやめたとは、思いませんけれど(笑)。
レーベルとは2枚のアルバム契約でサインしたと聞いていますから、次作もリリースされるということです。楽しみですね。

ジョニ・ミッチェルを動かしたにちがいない、トリビュート作2枚についても紹介しましょう。
まず、ジャズ・ピアノの大御所、ハービー・ハンコックが発表した、『リヴァー〜ジョニ・ミッチェルへのオマージュ』です。70年代から親交のある彼女の楽曲を、朋友ウェイン・ショーター(ss,ts)、デイヴ・ホランド(b)など、ジャズの第一人者たち5人編成の演奏。彼らをバックに、ジョニ本人をはじめ、多彩なシンガーが、ジョニ・ミッチェル楽曲を歌うという趣向のアルバムです。
ノラ・ジョーンズやコリーヌ・ベイリー・レイといった若手シンガーが、渾身の想いで歌えば、ティナ・ターナーが貫禄のパンチで〈イーディスと親玉〉を歌うのです。そのティナの歌のすばらしさ。これには、しびれました。ティナの歌声には、年輪がうむ慈愛がありました。
ジョニ自身も、ハービーの依頼ならと、歌で参加しました。両親の第二次世界大戦中の恋物語をベースに書いた〈ティー・リーフの予言〉を魂をこめて歌ったのです。母親を亡くしたばかりのジョニの歌唱からは、母親への想いが感じられ、歌にからむハービーのピアノがまた美しいのです。
ジャズ作品としても、ハービーとウエインという即興の名手が揃っていますから、クオリティが高く、聴きごたえ充分です。ジャズ作品としてもすばらしく、ジョニが絶賛する気持ちがよくわかります。

さて、トリビュート・アルバム、もう1作は、今年夏にリリースされた『トリビュート・トゥ・ジョニ・ミッチェル』です。こちらは、ポップス界の才能が大集合。群をぬいてよかったのが、プリンスがほとんどすべての楽器を演奏し歌った〈ア・ケイス・オブ・ユー〉でした。透明感のある仕上がりで、さすが元祖・王子。才能があふれでています。
ビョークの〈ボーホー・ダンス〉やカサンドラ・ウィルソンの〈バラにおくる〉も、個性炸裂。参加者全員、自分の好きな曲を選んだそうで、〈青春の光と影〉のようなヒット曲を選んでいないところが、本心からのトリビュートの証しなのでしょう。
昔の恋人ジェームス・テイラーが歌う〈リヴァー〉は、とてもロマンティックでした。この〈リヴァー〉は、今年でいえばマデリン・ペルーにもカヴァーされていましたね。ポップス・スタンダードになった感があります。
多くのミュージシャンの賞賛と愛をうけ、バレエも成功し、秋にはニューヨークでの絵画個展も成功しました。ジョニ・ミッチェルは、総合的な芸術家として、今、最も幸せなときをすごしているのではないでしょうか。
スピーカーで音楽を奏でながら踊る“Rolly”。
WalkmanとAIBOが合体したような優れものだと思ってください。
動きがすっごくかわいく、踊りのセンスも抜群。
パーティでもっていたら、ゼッタイにウケます。
“Rolly”と私 |
楽しい引継ぎ会@SonyStyle
このサイトのスタッフであった「殿水將人」さん(左)と「高橋亮」さん(中央)が
異動することになりました。残念ですが、発展的メンバー・チェンジなので
しかたがありません。「との」、今まで、お世話になりました。 |
ジョニ・ミッチェル
『シャイン』
ユニバーサル ミュージック
UCCO-3002
2007年9月26日発売
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ハービー・ハンコック
『リヴァー〜ジョニ・ミッチェルへのオマージュ』
ユニバーサル ミュージック
UCCV-1100
2007年9月19日発売