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中川ヨウのミュージック・ダイアリー

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太田朱美の『リスク・ファクター』/椿山音楽祭

[2008.02.11]
 音楽ジャーナリストの仕事をしていて、興奮するのは、新たな才能を発見したときです。「見つけた!」わたくしが、第一発見者ではないにしても、その「発見」は常にワクワクをともないます。

 最近ではフルート奏者の、太田朱美に興奮しました。彼女のことは、毎日新聞の名物記者、川崎さんから「新宿ピットインの昼の部に、すばらしいフルート奏者がでている」と聞き、知り初めました。
 なかなかチャンスに恵まれず、やっとわたくしが彼女をライヴで観ることができたのは、昨年の10月、イーストワークス エンタテインメントが開催した「ジャズ・トゥデイ 2007」に、彼女のグループ「リスク・ファクター」が登場したときのこと。
 太田朱美は島根県出身、中学時代ブラスバンドでフルートを始め、広島大学で生物学を専攻し、大学4年のときにプロで活動することを決めたといいます。
 その夜は、編曲家・ベース奏者の水谷浩章のラージ・バンド、「フォノライト」との共演でした。美しいハーモニーが特徴のフォノライトの彩りがそえられると、ともするとリスク・ファクターの鋭角的な斬り込みがやわらかくなりはしましたが、彼女の魅力は光っていました。音楽に充満する太田朱美の意欲が軸となり、満員の観客を魅了したのです。

 何を見ても、ジャズにしてしまう、彼女の旺盛な表現力。特に5曲からなる〈アメリカ自然史博物館組曲〉が、すばらしかった。聞けば、太田朱美は初めてのアメリカ旅行で行ったアメリカ自然史博物館で、ティラノザウルスの骨を見、発光する微生物を見るたびに興奮し、それをジャズにしたといいます。
 彼女の専攻を思い出してください。生物学が、ほんとうに好きな女性なのです。ジャズで自然を謳うことができるなんて、これは特筆すべき才能です。
 太田自身は、「自然にちなんだ曲ばかり書いていますから、人の感情などをテーマに作曲するのが今後の課題です」と語っていましたけれど。自然をジャズにしてしまう、その特質はわたくしには「宝物」に見えます。
 〈ゲシュタルト崩壊〉は織原良次(ベース)の作曲。太田は、織原の演奏を聴き衝撃を受け、参加を要請し、このグループを組んだそうですが、彼女を突き動かした理由がよくわかる、織原の骨太な演奏と作曲力でした。
 石田衛(ピアノ)の興がのったときの激しいエモーション、橋本学(ドラムス)の現代性のあるビート感もよかった。そこに風をはらみ、大自然を感じさせる太田朱美のフルートがのるわけです。
 まだ荒けずりな印象はありますが、そこが魅力なのです。整いすぎたら、リスク・ファクターではなくなってしまいます。
 今年1月にデビュー作『リスク・ファクター』がリリースされ、ライヴもバシバシやっています。今度は、どこに聴きにいこうかしら〜
 と、思っていたら、すごい音楽祭を見つけました。これにも、告知だけで興奮しました。それに、太田朱美のリスク・ファクターも出ているじゃありませんか!

 その音楽祭とは、東京で6万6000平方メートルの日本庭園をもつ「椿山荘」で、2月14日と15日に開催される「目白シンラート 椿山(つばきやま)音楽祭」。今回が、はじめての開催になります。
 ユニークだと感心したのは、女性ミュージシャンがリーダーのグループが、20以上も結集すること。そして、しなかやにジャンルの境界線を超えた人選がされていることです。
 なかでも、わたくしが絶対に見逃さないと、心に決めているのが、八代亜紀が歌うジャズ。彼女には、ジャズを歌っていた経験があるから、ジャズを歌うことに不思議はないけれど、あのハスキーでしかも張りのある歌声に、ジャズがよく合うのです。それに、巧い人は何を歌わせても巧い。ジャズ・シンガーが裸足で逃げる歌心。演歌にはブルーズに通じるものがあると、常々思っているのですが、それを実証していただきましょう、という気分。矢野沙織がサックスでバックにつくというのですから、これは見物です。
 スタンダードからは〈クライ・ミー・ア・リヴァー〉などをとりあげ、〈舟歌〉などの持ち歌もジャズ化するそうです。楽しみですね!15日の和洋ブッフェ+フリー・ドリンクのディナー・ショーで。

 ジャズ・ヴァイオリンの、牧山純子は、のびやかな音色としなかやな音楽解釈で、お気に入りですが、デビューを果たしてから聴くのは、これが最初になります。彼女のやさしさが、そのまま表出するステージになるのではないでしょうか。

 パーカッションのはたけやま裕(もちろん、女性です!)がリーダーの、「クラッシュ・ジャズズ」は、ジャズ&界面の音楽を、パーカッションをフィーチャーして、リズミカルにしあげて楽しいグループ。超絶系のテクですし、視覚的にも、動きがあるので楽しめます。
 どれだけパーカッションを叩いても、ゆらりともしない二の腕が、わたくしの憧れ。彼女たちには、早くアルバム・デビューしてもらいたいものです。きっと、もうすぐね。

 わたくしの「発見の興奮」に貢献してくれそうなのが、ヴァイオリンの梅津美葉が率いる室内楽団「アンサンブル・アルテミス」。モーツアルトから、チック・コリアまでをレパートリーにしているそうです。わたくしは、こういったジャンル越えをずっと応援してきたので、高く評価します。興奮させてもらえるんじゃないかな。

 ハープの彩愛玲は、チャペルで、クラシックから中国民謡までを演奏するそうです。あのチャペルで聴けるとは、ぴったりだと思います。
 日本庭園の散策の後にジャズ。すてきな計らいだと思いませんか?八代亜紀のディナー・ショーをのぞけば、1日券、3千円で、どの演奏家も聴き放題だそうです。うれしすぎ。
 「ジャズに生きる女たち」が、椿山荘に集結。エネルギーいっぱいもらえると、確信しています。

太田朱美
『リスク・ファクター』

East Works Entertainment
EWCD-0137
2008年01月23日発売

太田朱美さんと

やっぱりスゴかった八代亜紀@椿山音楽祭

八代亜紀さんと矢野沙織ちゃん

権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。

ハープにソプラノ、ヴァイオリンが加わって、〈赤とんぼ〉を共演。
アコースティックのよさも手伝って、心が洗われる音色&演奏でした。

2月2日、葉山の某研修センターで、慶応義塾大学sfc小川研究室〈balab〉の最終発表会を行いました。1年間の学生の研究成果を見るのは、とても楽しく、インスパイアされる体験でした。1年間の進歩の大きさに、うれしくなります。
その日、ちょうど小川克彦教授のバースデイが近いということで、学生たちとシークレットで仕込み、ケーキや小さなプレゼントを用意しました。これが、その模様。3時のおやつに皆でケーキをいただき、その後の発表も大快調→大満足でした。
小川教授の好きな、電車、それも京急の電車のおもちゃにバースデイ・カードをのせて、お届け♪
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