お気に入りのピアニスト、ハクエイ・キムが、スタンダード集を放ってきました。成熟と革新、その双方が新作『シャドウ・オブ・タイム』にみなぎっていて、オーストラリアでジャズを学んだこの注目のピアニストの成長をうれしく聴きました。
デビュー作から変わらぬ、いつものオーストラリア学友トリオによる、シドニー録音。このトリオのすばらしさは、さすがマイク・ノック門下生です。即興演奏にたけていて、相手の音を聴いてから反応していることが、手にとるようにわかるのです。今まではオリジナル・ナンバーを中心に発表してきたハクエイですが、今作ではスタンダードに挑戦し、それを重荷に思うことなく「かえって自由に、ピアノ演奏に集中できました」(ハクエイ談)。
その設定スタンダード(標準)と、志の高さが、ハクエイの素晴らしい点ですね。
かなりツウ好みの選曲で、そこにもハクエイらしさがでています。
ピアニストとして評価したいのは、シダー・ウォルトン作曲〈ホリーランド〉での演奏でしょう。バッハのインベイションのようなイントロでスタートし、元来シンコペーションが達者な彼の演奏が聴きものです。
また、ジョーン・バエズなどの歌で知られている〈ドナ・ドナ〉には、参りました。この楽曲、どこまでもシンプルでしょう?それを、深く掘り下げると、こんなに深さがあったのね、というのが偽らざる感想です。
聞けば、ハクエイが子供の頃に音楽の授業で歌って以来、好きな曲なのだそう。
〈ドナ・ドナ〉の静謐なイントロは、涙なくしては聴けません。本トリオならではの音楽的会話で、ベン・ウェイプルス(b)が素晴らしいソロをとると、その間は沈黙するデイヴ・グッドマン(ds)がいる。テンポを一気に速めてからは、一体となって疾走する。そのスピードとエネルギー量が圧倒的でした。
スウィングするビクター・ヤング作曲の〈ア・ハンドレッド・イヤーズ・フロム・トゥデイ〉、タッド・ダメロンが作曲した〈レディー・バード〉の美しさも心に残ります。
クリシェな表現ですが、ピアノ・トリオ・ファン、必聴のアルバムになっています。
ますます独自性に磨きをかけた(オーストラリアのジャズは、実に独創的なのです)ハクエイが、3月2日(日)、モーション・ブルー横浜に、レコ発で出演します。
しかも!、豪トリオが、初めて日本で結集するのです!
わたくしは、出張を早めに切り上げ、横浜に直行します。3人ならではの「間」、緩急自在の演奏を、聴きのがすわけにはいきませんから!
ハクエイ・キム
『シャドウ・オブ・タイム』
株式会社ディスクユニオン
DIW-634
2008年01月25日発売


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3月2日は、とびきり素晴らしかった。
ハクエイのオリジナルは、やはりあのトリオで聴くべき音楽なのですね。
ハクエイのピアノの個性が、この豪トリオだと、くっきりと浮きでて、初めて真にハクエイのピアノを聴いたという感慨をもちました。
彼らには、また来てもらいましょう♪