マドンナの動きが熱い、この春。
3月に念願の「ロックの殿堂入り」を果たし、4月30日には新作「ハード・キャンディ」がリリースされます。
5月には第61回カンヌ映画祭においてエイズ・チャリティ・イベントに参加することが決定。新作映画「I am Because We are」と題された、アフリカでも最も貧困な国といわれるマウライで、エイズによって親を奪われた子供たちを描いたドキュメンタリーも公開される予定です。
マウライから養子をもらったことで、マスコミを賑わせた彼女ですが、世間の風評をものともせず、その行動は「まっしぐら」です。マウライに遺児保護施設を設立したほどの、熱の入れようです。すごい行動力ですね。
マドンナは語っています。
「スピリチュアリティを通じてしか、世界は救済できないと思う。なぜって、戦争をしていない状態が平和なのではなく、平和って、もっと心に根ざした、深い心理体験だから」
このところのマドンナの活動を見ていると、彼女の悲願である、「スピリチュアリティを通じての世界救済」へと歩を進めつつあるという印象をもつのです。

さて、今日はその新作「ハード・キャンディ」について書きましょう。タイトルからして意味深ですが(「どこが?」と聞いたあなた、自分で考えてね)、今作もダンス・テューンで統一された作風。
ただ前作と異なるのは、ティンバランドやネプチューンズらのプロデュースを得、重層的なサウンドを完成させたことです。前作ではノン・ストップが売りのひとつでしたが、今作では、更に一歩進め、凝ったフェイド・アウトを使って曲をつないでいます。
たぶん、この「ハード・キャンディ」は、音楽誌などではヒップ・ホップ・アルバムという呼ばれ方をするでしょう。でも、既存のヒップ・ホップを超えているのは、男声による語りやヴォーカルを、相手役や演劇の台本のト書きに見立て、メロディを歌うマドンナとの対比で、歌のストーリーをも重層化している点です。
歌のなかで、ノリと突っ込みが機能しているわけです。あるいは、オペラのように何人かの登場人物が、それぞれの意見や感情を歌っていると思ってもらってもいいですね。
オーケストラルなパーカッション群の響きが、その歌のストーリーの見事な引き立て役になり、迫力を生んでいきます。聴き手であるわたくしたちは、幾層ものミルフィーユ的サウンドに包まれた感覚にとらわれるでしょう。耳で聴くというより、音楽のなかを泳いでいく感覚、でしょうか。身体全体で聴くように、サウンド/音楽が構成されている。これも、ほめたいところです。
最先端にいる気鋭たちを集めて制作されたアルバムでも、有機的な音がする。それも、マドンナが心を傾けた点でしたし、全13曲のすべてに彼女自身が作詞・作曲に加わり、自身の「声」を届けようと心を砕いたことも、アルバム成功の要因のひとつです。
たとえば、スパニッシュ・テイストの〈スパニッシュ・レッスン〉では、通常手拍子が使われるところを、打ち込み風の連打音を採用することで、サウンドを21世紀的にしています。
スペイシーなシンセサイザーをバックに歌う〈ビート・ゴーズ・オン〉では、「あなたの考えることが現実化される」といった歌詞で、スピリチュアル・リーダーとしての世界ポジティヴ化発言もなされています。
ギターでスタートする〈マイルス・アウェイ〉は、自分を捨てていった男に「あなたが次に私に会うときは、もう別の私よ」と歌います。このナンバーは、木村拓哉主演の月9ドラマ「CHANGE」の主題歌にも使われています。(TVはまだ見ていないけれど、今度見てみます。キムタクを見ると、次の日の肌の調子がよくなりますから)

歌詞とジャケットを見ていると、セックスが題材のように思える今作。ほとんどそれで間違いはないのですが、マドンナはそこに「Save the World」といったメッセージをはさみこみ、世界救済への祈りをこめているのです。
セックスと世界救済を、どうして同じ地平で歌えるのだろうと、わたくしは一瞬考え込みましたが、それがマドンナの手法であり、それがマドンナなのでしょう。
それに、彼女なら、たぶん「平和じゃなかったら、セックスしようって気分にもならないわよ」(仮想)なんて、答えるのではないでしょうか。
ポップス界の女王である彼女にしかできない力技に、「お見事!」と声をかけた、ハードなキャンディでした。
マドンナ『ハード・キャンディ』
ワーナーミュージックジャパン
WPCR12880
2008年04月30日発売
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権利者の許可を得ずに、複製することを禁じます。 |
マドンナが、4月30日にNYで行ったアルバム・リリース記念ライヴが、日本独占放送されるそうです。
タイトルは、
「MADONNA Live from Roseland Ballroom New York」。(CS放送フジテレビ721)
日時は、7月12日(土)22:00〜23:00に放送されます。楽しみ。

Photo credit: Steven Klein
Styling credits: Gina Brooke using Shu Uemura and Andy Lecompte of SOLO Artists
【「THE FUJIYA GOHONJIN」への華麗なる変身】
出張月間だった3月は、拙書「ジャズに生きた女たち」を多くの方に知っていただきたいという願いを胸に、長野にプロモーションに行ってきました。
長野市は縁あって、大好きな街なのです。「ニューポート・ジャズ・フェスティヴァル・イン・斑尾」のTV/ラジオ中継でお世話になった、武田徹さんが今も住まわれ、武田さんがフリーランスになった今も番組をもっておられるSBC信越放送があるので、何かあると呼んでくださる。そのおかげで、長野市とのご縁が深まったのです。
今回も、武田さんがパーソナリティをつとめるご長寿ラジオ番組、「つれづれ散歩道」に出演し、拙書のことを紹介させていただいてきました。いつもながら、武田さんとのお仕事は、インプロヴィゼーションたっぷりで、楽しかったですね。武田さんは、早稲田大学時代からのジャズ・ドラマーでもあるので、即興や、生放送がお得意なのです。まぁ、いつもと違うのは、自分の本の話をするわけですので、ちょっと照れたことでしょうか。
お世話になった皆さん、ありがとうございました。
また、今回の長野の旅でうれしかったのが、2006年に、レストランと結婚式場をあわせもつ、「
THE FUJIYA GOHONJIN」として生まれ変わった「御本陣、藤屋旅館」に行けたことです。
変身を遂げてから、初めての訪問。武田さんの紹介で、長年泊めていただいてきた藤屋旅館です。女将さん、藤井奎子さんとも久しぶりの再会とあって、「女学生」のように話が咲きました。
この「御本陣、藤屋旅館」は善光寺のご門前にあり、1648年に創業された由緒のある旅館です。古くは江戸時代に、加賀百万石大納言卿の御本陣として、また明治以降も、宮家の方々、伊藤博文や福沢諭吉などをはじめ、各界の著名人、地元の名士を魅了してきた旅館です。
1925年、善光寺の仁王門の再生建築を手がけた宮大工によって、大正ロマン薫る、現在の洋館が建築されました。アールデコの様式が印象的な外観と、洋間。そして内部の数寄屋造りが一体になった建物は、和洋折衷の美しきひな形でした。
格式が高くて、武田さんの紹介がなかったら、宿泊しなかったでしょうね。でも、斑尾ジャズ・フェスの番組作りの際に泊めていただき、わたくしもすっかりファンになってしまいました。またFM長野が開局して間もないときに、ジャズ演奏収録番組のために1年間、毎月長野市に赴くことになり、そのたびに藤屋さんに泊めていただいていたので、自然に女将さんにも可愛がっていただくようになったのです。
その藤屋旅館が、2006年に大変身を遂げ、以来、行きたい、行きたいと思いながら、なかなか機会を作れず、今になってしまいました。
画像をいっぱい撮ってきたので、ご覧ください。レストランにバー、バンケットに新設されたチャペルと、これぞ温故知新。古き良き時代の香りと、現代の使い勝手の好さが見事にマッチして、「こんな所、他にはないんじゃない?」という場になっていました。レトロ・シックとは、このことですね。
その上、レストランで供されるイタリアンがとても美味しいのですから、絶賛してしまいます。宿泊することは、もうできませんが、それ以上の楽しさを味わってきました。文化財を次世代に残すという、奎子女将さんの心意気にも、打たれました。
福沢諭吉先生が、宿泊されたときにしたためられた「忙中閑あり」の書も拝見してきましたが、わたくしにとってもありがたい、「忙中閑あり」の長野の旅でした。

善光寺のおひざもと、藤屋御本陣の正面玄関の前で |
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コーナー毎にレトロ・シックなしつらえがなされている |
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長年お世話になっている藤屋旅館のおかみさん、藤井奎子さんと |
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福沢諭吉先生が、藤屋に泊まられたときに残された「忙中閑あり」の書 |
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「忙中閑あり」の間は個室として利用できる |
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同じ敷地内に建てられた結婚式用のチャペル |

信州が誇るパーソナリティ、武田徹さんの番組に出演中。SBC信越放送の新社屋にて |
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武田徹さん、芳子さんご夫妻に「膳」に連れて行っていただく |