ついご無沙汰していた昔の友人に、偶然に、あるいは必然的に再会することの多い今年。
BRUTUS の元名物編集者で、後に「ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行」で木村伊兵衛賞を受賞し、「TOKYO STYLE」のワールドワイド・ヒットを皮切りに写真家・作家として躍進する、都築響一さんと久しぶりに会いました。この再会は、不思議な縁の賜物。
わたくしは、慶應義塾大学で「カラオケロジー」と銘打ち、カラオケの研究をはじめているのですが、そのリサーチで雑誌「カラオケ・ファン」をめくっていたときのこと。なんと、都築さんが連載をはじめているではありませんか。
演歌歌手など、カラオケ片手に歌い続けているシンガーにインタヴューし、その自宅で撮影するという趣向の連載で、その名も「わが家にようこそ♪」。
取り上げられていた泉ちどりという演歌歌手の話が面白く、ちどりさんの艶姿に「何を撮らせてもエロっぽく撮る人だ」と、わたくしはひとしきり感心し、昔からの友人はその時の興味も共有するものかと感慨深くもあり、さっそく電話。
「お元気??」
と、いつもの明るさで会話が弾み、電話を切る頃には、彼がプロデュースしたという、カラオケ・スナック「来夢来人(ライムライト)」に連れて行って!という、約束をとりつけていたという次第。
この「来夢来人」、聞けば新丸の内ビルディング7階のレストラン・フロアーにあるというじゃありませんか。
「そもそも、新丸ビル7階に佐藤さん(GOLDを作った伝説の人)と「
むすむす」という蒸し料理のお店を作ったんだよね。
同じ7階の奥まった場所に作る、お店のアイデアはないか?って、三菱地所の人に聞かれてね。そりゃ、スナックでしょうと言ったのがきっかけになった」
そして、なんと(基本)男子禁制のカラオケ・スナックを作ってしまったのです。

行ってきました。「来夢来人」。1回行っただけで、既にお気に入り。昼もやっているのだけれど、夜は9時か10時頃から、女性同伴の場合のみ、男性も入店できる。その様子は、昔懐かしい昭和のスナック。入り口に、バラの造花が這わせてあり、外にはビール・ケースが重ねられています。もちろん、これはディスプレイ。
場末のスナック風に入念に仕上げた内装のその店に、かわいい丸の内OLがやってきては、グレーのスカートから白いシャツをはみださせ、歌いまくっている。まぁ?この光景は何?
しかも彼女たちは隣席と交流し、他の客の歌にも声援をおくっているじゃないですか。一昔前の「カラオケでの熱い交流」が、ここには今も息づいているではありませんか。
皆さんは驚くかもしれないけれど、今時の大学生はカラオケに行っても、人の歌に拍手をしません。楽しんでいるのが前提だから、あえて拍手することはないというのです。ま、それが80年代以降生まれのコミュニケーション温度なのではありますが、拍手の快感を知る世代としては、いつも饗をそがれてしまう。カタルシスがないじゃありませんか!
それがここ「来夢来人」では、隣のかわいいOLも、その隣の遊牧民風の一群も、一緒になって大声援をおくり、手拍手でもりあげてくれる。わたくしが歌う〈真夏の夜の夢〉でこんなに受けちゃ、申し訳ないくらい。そうつぶやくと、都築さん「ユーミンもこの間来て、歌いまくって帰ったそうだよ」。
そんな噂にも羽がはえ、丸の内を飛び交い、今の「来夢来人」人気を築いたようです。
場末のスナック風に見える内装は、よく見ると凝ったもので、天井をわざと低くし、壁には昭和時代のポスターが貼られ、コースターはレースの袴(これはアジアで特注してくるそう)。出される付け出しのおかきには、オマケがついていて、そこには四十八手の絵柄(すごく、都築さんっぽい)。
バー・カウンターのなかも、若干乱雑目に酒瓶が並べられ、シャンデリアも、おしゃれな店で売っている、but最も場末に向いた品。ウェイターがイケメンぞろいで、こればかりは本当の場末にはあり得ないと思うけれど、これは変えないで。
料理は、7階のお店からなら何でもとれるし、昼はあんみつでカラオケってなことも可能。残業が日常のOLは、ときには朝の4時まで飲み歌い、始発で帰っていく強者もいるというから、女子は元気。
都築響一さんに、もう少し話してもらいました。
「ぼくとしてはスナックが面白いから、カラオケにまで手をそめている。スナックは風営法が施行された1964年東京オリンピックの年にでき、そこに後からカラオケがついてきた。全国で約27万軒あるんだよ。日本人の大半は、スナックで今も遊んでいるわけ。ぼくたちの遊び方が、どちらかというとおかしいわけ。皆が楽しんでいる楽しみ方を、知ってもらいたいじゃない?」
だから、スナックなのだというのです。哲学のある、「来夢来人」なのです。

女性主導。女の城。大奥を思い出すのは、江戸城が近いから? でも、ここでは将軍様不在、お局さま無関係に、みんなが一緒にわいわい楽しむ。
まるで、夢のようでしょう? だから、「来夢来人」なのですね、きっと。
次回は、ディープなカラオケ・スナックに一緒に行こうと約束して、都築さんと別れたのでした。

都築響一さんと

夢の世界への扉

お飾りのビール・ケース

おかきの名前が「よろめき」

イケメン、ウェイター評判

都築さんが撮影した、中川ヨウ。
やはり艶っぽく撮れている